第6話 事業承継で何を伝え残していくのか?
事業承継では、価値があるものだから伝え残していくという考えが前提ですよね。
「先代社長から受け継いでいるものだから…」とかで、
そのまんまをコピペして時代にフィットしないものを残していくことは、
生き残っていくには、どんどん厳しくなっていきます。
⑴ 会社のスピードを決めているものは…
昔であれば、ITを使って生産性を高めるとか、SNSという広報手段を使い、全国の人から見つけてもらえるようにして販売手段も広げる。ということはなかったと思いますが、
今の時代、競合している他社を見て、「あんなことを始めたな…(p_-)」とか、
別の企業のいいところを真似て「うちでもこれをやってみようか…」と、
一歩踏み出す戦略を考えたりしてるのではないでしょうか。
この進化のスピードについていけなくなったときには、
社長のバトンタッチを考えた方がいいといわれます。
エンジンを積み替えてスピードアップし、社会のスピードに合わせて会社は走っていかなければ、競合他社に負けてしまいます。
決裁権者である「社長のスピード」は「会社のスピード」でもあるのです。
売り物を変えず、見せ方を変える。とか、求められているものが変わってきたので、売り物自体を変えていくという判断(決済)も、社長が時代に合わせてスピードよくしていく必要があるのです。
⑵ 引継いでいくものとは?
会社のスピードをこれからの時代に合わせていくとしても、
さて、事業承継では、何を引継ぐべきでしょうか?
会社には、「理念」とか、「方針」というものが掲げられていることでしょう。
社長一人だけではなく、従業員も同じ方向に向いて進んでいくためや、
顧客にも会社のことを認知し、ファンになってもらうためにも必要なものです。
また、災害が発生したときには、すぐに動かせる資源が少なくなった非常時に、
「何を優先させて事業を継続させていくのか?」
社長やチームリーダーは、方針をもとに優先して復旧すべきものを決定するなど、
災害時の指標としても使われます。
この「理念」や「方針」を引継いでいくことで、今までの顧客が居心地よく、
従業員も自分がこんな会社であってほしい方向と企業が進んでいく未来とが共通していることの居心地よさにもつながっているものだと思います。
そして、一番大切なものは、顧客に提供している「価値(商品)」を引継ぐことです。
いつもと同じものが手に入るからリピート客がいて、それを楽しみにしてくれる顧客がファンとなってくれる。
そんな価値の提供をずっと引継いでいくことは、会社にとって存在意義を感じられているのではないでしょうか。
しかし、これらがすべてひっくり返る場合もあるのです。
⑶ 何を引継いでいくのか?を見直しするタイミング
「方針」を変えて今の時代に合ったものに方向転換しなければいけない場合もあるのです。
震災での例では、設備が壊れてしまい、商品がまったく作れなくなった場合や、
顧客ニーズがなくなってしまったものは、看板商品であったものでも、作り続けることをあきらめる場合もあるのです。
顧客層が変わって、お客様への伝えるメッセージを変えていく必要もあります。
新型コロナ感染症が長期にわたって経営環境も変わってくるような状況をみると、
方針を変え、商品も時代に合わせて変えていく場合も当然にあるということです。
事業承継という社長の交代を考えるタイミングでは、
「自社はこのままの流れ(資産の引き継ぎ)でいいのか?」と、
周りを見て確かめなければいけません。
それは、「引継ぐべき価値」があるのかどうかということです。
⑷ 誰が事業承継後に渡る資産を決め、磨くのか?
『「方針」や「商品」を変えたければ、後継者が引継いだ後に変えればいい…』という考えもあるかもしれません。
しかし、事業承継を進めていくのであれば、これは現社長が退任前に進めていくほうが後継者にとっては引継ぎ後のプレッシャーが少なくて済みます。(もちろん、今すぐに変えていく必要があれば承継のタイミングまで待たずに必要ですが…)
引継ぐ資産を整理し、磨き上げてから引き渡すこと。
そして、その磨き上げの作業の中に、後継者が加わっていくことが代表のバトンタッチ後の運営がスムーズにいきます。
後継者が引継いでからやるべき仕事は「信用」を積み上げていくことの他、
「前の社長はよかったけれど…」と言われる、比較される重圧にも耐えていかなくてはいけません。
そんな中に会社を「進化させていくこと」までを丸投げしてしまうと、抵抗勢力も出てくることもあるのです。
バトンを引き継いで、さらに成長させていく会社の未来のためにも、
現社長が資産を磨き、託していけるように準備していただきたいと思っています。
事業承継では、代表権の移動(財産の移動なども…)が大きなイベントですが、
それまでに「何を引継ぐのか?それには価値があるのか?」を見直すことも大事な作業です。
現社長がこなしていく事業承継の課題は多いですが、
未来へ託す「資産」を決定し、磨き上げていくことも忘れずに、進めていっていただきたいと思います。
それでは、今日はここまで。