第11回 発達障害のある子どもが避難するまでの準備(家族と本人、そしてかかわる人の知識の準備)~じつは、みんな一緒だったのです~
今回は私には障害を持つ子どもがいませんので、知識として学び、施設などで接して感じ、そして考えて「伝えていく必要」を感じたものの中の1つに「コミュニケーションの取り方」についてお話しようと思います。
これまでお話してきた中で、災害時には自分から情報を取りに行かなければいけないとお伝えしました。
健常者であろうと障害があろうと、「今、自分はどうなっているのか?」を知らなければ見通しを立てて、自分をコントロールすることや、誰かを助けることも出来ません。
他者とのコミュニケーションは自分のとるべき行動の判断をするためにも必要ですが、自分を落ち着かせるためにも必要です。
自閉症の子どもには「してもいいこと…〇」や「やってはいけない事…×」で幼少の時には伝え、教えてきたことも10才を過ぎるころから「自分でできること」が増え、知恵がついてくると、理由を伝えなければ理解をして動いてくれなくなってきます。(これは自閉症に限らず誰でもそうですね)
その理解するまでの頭の働きに自閉症の子どもには「相手のことや、結果がどうなるかを想像して会話を理解する(話で言うなら行間を読むと言いますか…)」ことが少し出来ないところがあります。
押す力の加減が分からなかったり、自分が思っていることは相手も同じことを考えていると思い、自分と「同一化」してしまうことがあります。
災害時に「避難する」場所は、どんな人も、まずは命の危険から身を守るために集まってくる場所なのです。
誰かが我慢をすることはよくないし、我慢し続けることが体に不調をきたすことはよく知られています。そのために、コミュニケーションをうまくとる必要があります。
自閉症の子どもには「知らない人とのかかわり」を「怖い」と思ったり「避けたい」と思い、その人から、とりあえず離れたいと思うことから、心にもなく「いらない」とか「しない」とNOTの返事をすることがあるようです。「ほしい」のに「いらない」と言ったりするのです。
このような子どもには「これにする?」「こっちにする?」とDo「どちらかにする」で聞いてあげるといいようですが、これは、本当にその子の必要と不要を知っている人でないと「食べてはいけないアレルギー」があるととても危険です。
そのためにはコミュニケーションツールとして「サポートをしてもらうための携帯カード」を用意してあげてください。(ブログの第8回にお話した携帯カードです)
「こんなことが苦手です。」「こんなアレルギーがあります」「○時にお薬を飲まないといけません。薬はカバンに入っています」ということを自分(保護者や支援する人)がずっと見てあげられなくてもサポートしてくれる人が分かるように。
そして、「こう言うと話を聞いてくれます」と、自分が接して分かったコミュニケーションのアドバイスを書き入れてあげると「誰かに手を差し伸ばしてもらえる機会」が増え、「変わった子や…」と放っておかれる危険も減ると思います。
しかし、本当に危険なときや誰かが巻き込まれそうな時は、力ずくでも引っ張って連れて逃げないといけません。
過去の震災でも「逃げないでいた」人をサポートしていた人が「力ずく」で連れ出さなかったために巻き込まれている事例もあります。
コミュニケーションをとるには、「耳で聞くことが苦手、話をするのが苦手」という子がいます。
何かを聞いてもらうために、何かを教えてもらうためには「筆談」でするとスムーズにいくことがあります。
そのためには、子ども自身に「筆談」(欲しいモノの絵をかくことが出来たりするのもいいと思います)を身につけさせ、困った時には「これを使う」と覚えさせることが必要です。障害のある子どもには、普段の生活に取り入れて「そうするもの」と定着させることが困惑しない為にも必要なのです。
私の避難する時の持出袋には「メモ帳とペン」を入れています。それには筆談をする必要がある場合には使えますし、私は子どもを一緒に連れ歩く危険がある場合は留守番させることを前提に「一人で過ごさせるためのメモとペン」でもあります。
困った事や、目を背けたい時に気持ちを書きこませたり、お母さんとお話をするために「こんなことがあったよ」の気づきを書いてもらったり、お絵かきをして気を紛らせることなど記録だけではなく、自分をコントロールするためのメモ帳でもあります。
筆談を使わずにコミュニケーションをうまく取れるのであればいいのですが、「筆談」をコミュニケーションのツールにして使えるようにしておくことも周りに知らない人がたくさん人がいる場合は必要だと思います。
今日のお話は「発達障害のある子どものために…」と書きましたが、殆どの子どもにも通じるものだと思っています。
障害があろうとなかろうと、わが子が誰かに守ってもらえるようにしておく「あらかじめの準備」としてコミュニケーションがうまく取れるようにしておくことは災害時を考えると誰もが必要なのです。
すべての人に「命を守る力」と「生き抜く力」を身につけてもらうために「この障害のある人はどう…」という特徴を知るための知識は必要ですが、生活を分けて考える必要はないと思っています。
すべての人が同じ社会で生活しているのですから。
次回は…「災害時に自分でできる対処法(消防と医療)」についてお話をしようと思います。

