第17回 生活を早く復旧させていくために収入を絶やさない準備について
企業の事業継続計画(BCP)というものが普及しつつあります。
これは災害が起こっても、企業は事業を中断させず、また中断してしまった場合はできるだけ早く復旧して収益の回復やマイナス分を取り戻す災害時用の動きに切り替えるためのマニュアルです。
事業主の方には「事業継続計画(BCP)」を作って対策しましょう。と収益を守るためのお話ができますが、雇用されている場合の対策としてはどうしたらいいでしょうか。
企業(お店)は収益を守るために必ず動いてくれる「人」が必要です。
しかし、企業が(お店が)必要としている時に出勤できなければ、そこで仕事をしている人は出勤した人よりもお給料が少なくても、従業員の削減リストに名前が挙がっても最悪の場合仕方がないのかもしれません。
それも含めて「災害」から受ける被害なのです。
職場が無くなっても別の仕事を探せばいいのかもしれません。それだけの技術があったり、実力があればのことですね。しかし、収入がいったん途絶えてしまうかもしれません。では、その時のための蓄えは何か月分ありますか?(これは稼ぎ頭が入院してしまった時と同じ備えとして考えられますね)
家族を安全に守ったうえで必要な収入も途絶えさせてはいけません。
「災害だから仕方がない…」ではなく、受ける被害を予測して「被害を軽減させる」ために準備をしなければいけません。
家族の危機管理の対策は企業の事業継続計画(BCP)の成果にもつながっています。
企業が生き残ると仕事(家庭)も安泰に近づくのです。
…そう、近づくだけです。企業にとって重要な取引先が倒れると影響も受けるだろうし、そもそも災害でお客様自体がいなくなると、それまでの仕事は無くなるので、事業形態を変えなければいけないかもしれません。そこにあなたの仕事があるかどうか…また別の対策事案が出てきます。
企業の存続まで考えることは今は置いといて…
災害直後から「仕事に来れる?」と言われて出勤できるようにしておかなければ、「じゃ、いいよ…」と次に出勤できる人を探されるわけです。
業種で言うと電気や上下水道、通信、エレベータの管理会社、医療、介護施設、薬局、建設、鉄道、コンビニ、学校、幼稚園、警察、消防、お役所などなど普段の生活に多くの人が「止まっては困るな…」と考える業種の人たちはすぐにでも出動が必要なのです。
通常の利用目的と違っても、急きょ避難場所のように利用者には使われることもあるので、(カラオケボックスやネットカフェなどなど)殆どの業種が何かで動き出そうとすると思います。
なので、お仕事をされている人ができるだけ早く復帰できるような体制に家族がしなければいけないのです。
お金を稼いでくる人が仕事に向かえるようにする為には、「家族が無事であること」だけではなく、「早く復旧する力がある家族」であることが必要です。
家族一人一人が自分の復旧にどれだけ対策をしているかが必要なのです。
幼児でも「自分の名前とお父さん、お母さんの名前が言える」とか「電話番号が言える」とか「住所」が言えたらすごいことですし、知っている人に助けてもらえるように、何か自分から話ができるようになると生きのびる力が備わってきているように感じます。こんなことが家族の生活復旧の速度を早めます。
少し大きくなると、小さな兄弟の面倒が見れるようになったり、親の代わりに何か並んでもらいに行けたり、自分で選択し、決めたことに責任が持てるようになってくれると、とても安心できます。
郵便を出しに行く、1人で買い物をさせてみる、回覧板をまわしに行かせてみる…など挑戦をさせて成功事例を作っていってやると、何かあった時に誰かに声をかけて助けてもらいやすい状態に能力アップできるのです。
災害の時は、どうしても情報はまとまった集団に伝えられ、取りこぼすこともあります。自分の知らなかった情報を得やすくするためにも「誰かに教えてもらう」ということはとても役に立つ手段です。
それは子どもにも出来るようにさせると、災害の時に大切なお水が飲めるかもしれないし、トイレが使えるかもしれないのです。
そんなことでも子どもや高齢者も、話しかけられなかったり「面倒だから…」と我慢してしまうことがあります。
要援護者と言われる人たちにも生きのびる力をもたせてあげなくてはいけません。
また、障害のある子どもでも、自分で自分の身を守るための行動ができると、支援者や保護者はとても心強くなります。話すことが出来ない場合は見せること(保護者からのメッセージに気づいてもらうこと)が出来ると一安心です(「助けてカード」と言われる携帯カードなどがそれに使われます)
健常者でも災害時の恐怖を前にすると、能力(判断力や行動のスピードなど)は間違いなく落ちると思いますので、それぞれの持っている能力ができるだけ最大限に発揮できるよう携帯カードのようなツールを用意することは家族の復旧速度を速め、収入を得て普段の生活に早く戻すことにつながります。
それぞれが勝手に力を蓄えられたらいいのですが、人間の脳には「怠け癖」がありますので、家族でサポートしながら(さらに、地域で声をかけ合いながら)能力を高めていく必要があると思います。
みなさんのご家庭では、だれがどんな力を持ってもらうと助かりますか?1つ2つ考えてみて下さい。
例えば、わが家では2人の子どもたちは「誰かが困っている時に知らない人に何かをお願いすることが出来る」のですが、「自分の困ったことは我慢する」所があります。
なので「自分の困ったことを誰かに聞いて助けてもらう」を課題にして普段の生活に取り入れます。(こんなことも出来ないの?と言われるかもしれませんが…)
スーパーなどでモノを探しきれない時に「聞いてきて」と聞き役にさせてみたり、トイレが分からない時に答えを言わずに「あの定員さんに聞いて行ってきて」と自分で聞かせるようにもします。それでも何とか人に聞かずに自分で解決するように動いていますが、まあ、解決になればよしとして、我慢をするようであれば、ちゃんと聞くようにさせます。力をつける為には親がなんでも先回り(教えてしまうこと)をしてはいけないのだそうです。
私はよく初めて行く場所には、迷って遅くなるより「道に迷っています。」とスマホの地図を片手に周辺を知っていそうな人に聞きます
何か地図のように見てもらえるものがあると、ほぼすべての人がそれを見て「今はここ、こっち向きに行く」を教えてくれます。説明してくれる人が目的のお店やビルを知らなくても「知りません」では終わったことがありません。ヒントでも分かると「助かりました!」とお礼が言えますし、相手の方も「人助けができた」と思ってくれていると思います。
こんな風にヒントだけでも教えてもらい(いい内科のお医者さんは知りませんか?とか、家の水道の調子が悪いので、すぐに来てくれるいい水道屋さん知ってますか?とか気軽に「困った…」を教えてもらえるような関係を作り)、お礼を言うことがご近所ででも出来ると、きっと次も「何か困っていたら教えてあげよう!」と思ってもらえかもしれません(人間の脳は誰かを喜ばせることが好きな性質があるのです)
もし、自分がそばにいてやれない場合でも、子どもたちは誰かに見守ってもらえることが出来るでしょう。
災害の復旧には全ての役目を誰かが抱え込んでしてしまうのではなく(長期戦の場合はバテてしまいます)子どもでも自分の役割をこなせる力をつけておいて、復旧速度を早めなくてはいけません。
色々な挑戦をして、ハードルを越えた経験がある子どもたちは災害時でも頑張ってくれるはずです。
知的障害のある子どもたちでも「こんな時はこれ(「助けてカード」という携帯カード)を見せる」ことを知っていると「こうすると自分は大丈夫」とパニックにならずに落ち着くようになるかもしれません。(携帯カードに何を書くか(どこまで情報を出して助けてもらうかの判断)は保護者の方が決めればいいですし、何か能力がついてきたら、また書きかえればいいと思います)
それぞれの力をのばすように普段の生活に取り入れていき、そしてさらにランクアップを目指して1つ2つ課題を出していく。
そんなことを繰り返すと、今よりもきっと災害対応能力は備わっていき、早く普段の生活に戻す行動に繋げていくことが出来、そして収入を絶やさない見通しもつくのではないでしょうか。
収入を絶やさないためには、すぐに仕事に向かえる体制を作るために、家族の協力やそれぞれが周りを巻き込む力を持ち、自分で解決できるハードルをいくつも乗り越えてくる経験が必要などだと思います。
次回はいよいよ最終回です。
「家族の災害対応能力アップ!」のまとめについてお話しましょう。
では(^^)/