第18回 「家族の災害対応能力アップ!」のまとめ
もうたくさんの方がご存知のように、日本国内、どこに住んでいても自然災害の危険から逃れられるところはないようです。
タイミングが良くて今まで避けられている方もいますが、逆にタイミングが悪く、どこにいても大きな災害に直面している方もいます。
しかし、有難いことに、この災害大国の日本では世界の中でも飛びぬけて災害後のフォローが用意されています。
保険制度だったり、自衛隊の救助体制やDMATのように救命に飛び込んだりTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)の組織の活動、そして、ボランティアや、となり近所の助け合い精神(共助)というものまでが災害の多い日本であるからこそ生まれてきた素晴らしいフォローだと思います。
まだまだ失敗事例があったりしますが、それは次に活かすように、やはり教訓として受け入れられていきます。
だから、私たちはそれに甘えて何もしないのではなく、「被害を軽くする準備」をしなければいけないのです。
救助に向かってくれる「人」も私たちの家族や兄弟だったりするのですから…。
災害に備えることは「事前準備をすること」「直後の行動をこなすこと」「普段の生活に早く戻せること」です。
私が一番最初にお話したのは、災害の為の準備編ではなく「まさに今!災害が起こったら?」を考えて「自分の命を守る方法」(災害直後の行動)でした。
何を準備していても命を落としては意味がないものになるからです。
そして、生きのびる知恵をつけてもその時「決めたように動けるの?」と思いもよらない弱点をお話しました。
「脳がストップしてしまう」「人の意見に流される」または「自分は大丈夫だ!」と決めつけてしまう。
そんな事例で命を落としてしまう人がいたことで、今の私たちは学べる機会をもらっています。
この弱点をクリアするためには繰り返し訓練をしないと実際に思うように動けない可能性があります。
小学校の避難訓練のように実際に動くことで体が覚えていたり、非常用ベルの音に怖がらずに動けたりすることは、頭が承知しているからです。しかしこのような訓練をしていても、その時目の前にガラスが割れていたり、階段が崩れていたりして「見たこともない場面」に出くわすと動けなくなるかもしれません。それに備えて時々体験学習のように機会を作るべきだと思っています。
私はよく「人と防災未来センター」へ子どもを連れて災害の状況を繰り返しインプットできるように、楽しそうな工作イベントなどにかこつけて連れ出すようにしています。
災害直後にどう動くのか、体を動かした訓練が難しければ、動き方を思い起こす「頭の中のシミュレーション」をすることもいいのです。(インターネットで緊急地震速報の音が聞けたり、シミュレーション動画があったりします)
無事命を守ることが出来たなら、別々に行動していた家族の安否を早く知りたいものです。
そのために手段をたくさん知っておくこと、そして、使えるように練習しておくことが必要でした。
今の時代は子どもでも携帯電話を持ち、パソコンでメール等も使えます。子どもも、高齢者でもGPS機能を使うと、どこにいるのか場所を把握できる時代でもあります。
病気やけがをしていたら…どこに行けば助けてもらえるのか予め知っておく。救急車を使わず自分で対処することを考えておかなくてはいけません。
まずは自分で何とかできるように知識を習得します。心肺蘇生やケガの応急処置については消防署で無料講習(実践的なもの)もあります。出来なければ周りを巻き込んで出来る人に助けてもらう。しかし、その人たちも被災者です。助けてくれるかどうかは普段から良い関係を築いていなければいけません。(持ちつ、持たれつ…のお付き合いですね)
そして、普段の生活に戻すためには何から手を付けていいのかを知っておかなくては「しまった!」という事にもなりかねません。
保険請求の段取りや、助成金を受けるときの注意を知る。
何よりも、被災前に予定していた重要な用事を、災害だから何もしなくてもいいのかを考えなくてはいけません。災害は局所的であれば周りは普段通り動いているので、自分だけに何か特別扱いをしてもらえるのかは、もちろん確実ではありません。その情報は自分から取りに行かなければいけません。知らなかったことで人生が変わってしまうかもしれないのです。
「災害が起こらなければ…」というのは、今では通用しない言葉なのかもしれません。「それは残念でしたね…」と言われて終わることもあるのです。
準備をしたから大丈夫なのか?というのも誰も分かりません。「時の運」や「神のみぞ知る」と危機管理のエキスパートの人もそう言います。
ただ、災害に直面した時には何もしないできた人よりも、きっと対策をしてきた人は生きのびる可能性が高いでしょう。
子どもも大きくなると生活スタイルも変わってきます。その時に出来ることをしていけばいいのです。
わが家の2階には窓から逃げ出せるように「ロープ」が置かれています。
それは私が子どもの頃に学習机の脚に結んでいたものなのですが、私の父が生前用意してくれていた「命を守るためのロープ」なのです。
そのロープの話をしたら子どもたちが「つけて欲しい」と言い、実家からもってきたものです。
私はこのロープのあった部屋で阪神・淡路大震災を経験し、これを使わずに生きのびています。いわば幸運のロープなのです。
過去からつながってきているものが目の前にあることで、子どもたちにも「つなげて欲しいな…」と思っています。
そして、最後に…親ができる究極の教えとは「体を張って子どもを守ること」だと思います。それは「自分の命を引き換えにしてでも子どもの命を守ること」なのかもしれません。しかし、被災して生き残った方の話を聞くと、それもいけないことだと分かりました。
「生き残った方が『自分と引き換えに命を落とした人』のことを考えて一生悲しい気持ちを背負っていかなくてはいけない」からです。
もしも、「取るものを取らず、逃げなさい!」と逃げさせる指示を出すのであれば「何か(誰か)を失うことになったとしても選択したことに後悔しないで前に進むこと」まで教えておかなければいけません。
「その時の判断はそれでよかった」と家族の誰もが思うことを決めておくことです。
そこまですることが「大切な人を守るためにすべき対策」なのだと思います。
そこまで出来なければ、必ず皆が生きのびなければいけないのです。
そしてその後の生活が厳しく大変な生活になったとしても、「お金で買えない命があるのだから…」と、生き抜いて下さい。
私からお話ができたのは、たった18回の災害に備えた準備と、災害時の行動や考え方でしたが、セミナーでお話するとおそらく6時間以上のものを凝縮させています。(読むと1時間もかからないと思いますが…(^_^.))
しかし、みなさんが実践をして災害対応能力として自分の身を守り、家族を守る自信が身についてくるまでには何か月も何年にもなるのだろうと思います。
災害は生き物です。小さいものや大きいもの、いきなり現れることもあります。それに対応していくために時が経つにつれて法律が変わってきたり、助けてくれる力が大きくなってきたりもしています。
穏やかな生活を守るためにも、私たちも目をそむけず少しずつ何か行動に移してみてはどうでしょうか。
これまでのお話が、少しでも皆様の災害に対する恐怖がやわらぎ、生きていく強さを身に付けていただける一助になればいいなと思っています。そして、心から応援しています。
では全18回終了です…(^^)/

