第12話 事業承継で大変なことはお金の準備
事業を引継ぐときには資産を引き継ぐことになります。
儲かっている会社を引継ぐ場合、「後継者はラッキーだね!」と周りの人は考えるかもしれないけれど、
引継ぐ後継者にも引き取るだけのたくさん資金が必要なのです。
⑴ つぎ込む資金は動かせないもののため
株式会社の事業承継の場合、会社の不動産を時価で計算し、その他現預金などもあわせて株価に換算していきます。そして、社長の持ち株を後継者は買い受けて権限を引継ぎます。
純資産額が高く儲かっている会社というのは、株価が高いのです。
しかし、後継者は買い受けた後も、社屋の立っている土地などは手放すことができないわけで、後継者自身にお金が必要となった場合、買ったものを売ればいい…という簡単なものではありません。同じく株も手放していくことは決裁権を保持しておくためにできないものです。
後継者が、引継ぎのためにつぎ込んだ資金を取り戻すには、一生懸命売り上げを伸ばして自分の報酬へ反映させていく必要があるのです。
⑵ 社長なのに意見が通らない
社長であっても何か新しいことを始めるためには、取締役会や株主総会の決議が必要になります。そしてOKを出してもらうためには「持ち株数」が一定数無ければいけません。
自分の意見ですんなりスピードよく事業を進めていけないと、ビジネスチャンスを逃すかもしれません。
社長なのに、思うように事業が進まないということは、取引をする人にとっても「この人に言ってもなかなか動かないしな…」と距離を置いてしまうことがあるかもしれません。
このような心配事をなくすためにも社長に権限を集中させるよう持ち株比率を上げることが必要です。
一族で会社をされている場合でも、「皆同じ意見だから…」と思っていると大きな間違いです。
お金が絡むと、相続でも親族内で争いがあるように、会社経営の場でも親族内でクーデターなどが起こることもあるのです。
⑶ 社長なのに家が買えない
親が子供に会社を引き渡すときに、親が持ち株を贈与したとしても、後継者は贈与税を支払う必要があります。やっぱりお金が必要です。
さらに、会社が金融機関に借入をしていると、その保証人も引継いで自分の財産を担保に入れることもあります。
そうなったら、後継者の家族も「社長になることの代償」が大きいと引継ぐことに反対をする人もいます。
社長になったら、大きな家に住むどころか、自分の家を買うための資金がなくなってしまうこともあるのです。
⑷ 事業承継の負担を後継者が追わないために
社長は、あらかじめ後継者がどれだけの負担をしなければいけないのか考えておく必要があります。
その負担を軽くする対策をしてあげなければ、後継者に負担がかかりすぎて、お荷物を背負わせられたと憎まれることになるかもしれません。
現社長が、スムーズに経営が進められるように端株を集めたり持ち株比率を上げておくことや、社屋の改修など費用をかけるところは株価算定前にしておいて、純資産額を減らして後継者が買い取りやすいように株価を下げるなど、このほか、少しでも引継ぐ後継者の負担が軽くなるような対策はしておくべきだと思います。
また、社長が突然亡くなってしまうことを考えた場合どうでしょうか。
事業承継の負担プラス、決裁権者が何をしていたのかも分からないまま手探りで通常の経営を回していく負担も含めて、後継者となる人や、従業員にとっても「大変な世代交代だった」という思いだけが社長の印象として残してしまうかもしれません。
社長が元気なうちに、次の世代へつなぐ準備として、段階的な作業の引継ぎやお金の対策をしておく必要があると思いますよ。
そうそう…「なぜ元気なうちか?」というと、お金の対策の一つに「会社で掛ける保険」という考えもあるからです。
その選択肢を無くさないためにも「元気」なうちに考えていく必要があるということです。
それでは、今日はここまで。