第16話 医療機関の事業承継で引き継ぐ設備(モノ)について
以前、歯科クリニックの廃業のお手伝いをしたときに、設備を含めて「居抜き」という形で、同業の先生に引継いでいただけるよう、お願いや募集をしたことがありました。
そのまま患者さんもスタッフさんも引継いでいただけるよう、希望を出していました。
建物のスペースも広く、技師さんのスペースやスタッフの休憩場所もゆったりあり、すぐに見つかればいいなといろいろとお願いしていました。
⑴ 技術は進歩しているが…
ただ、院長先生はとても丁寧に設備を使われ、20年以上使い続けているモノもたくさんありました。
消毒に係る設備は新しくしていましたが、レントゲンを含め歯科用ユニット(診察の時に座る機械のついた椅子のこと)や空調設備も定期的にメンテナンスをしていて、まだまだ現役で使えるものばかりでした。
医療の現場は新しく感染症が出てくることにも対応をし、オンライン診療やマイナンバーカードまでもが医療現場に登場するくらい進んできている中、歯科についても新しい技術も出てきているだろうし、受付対応も予約システムなど、ベンダーさんも新しく紹介などもあっただろうけれど…
現状を確認するにつれて、とても懐かしい空間にいるような気持ちにさせられるクリニックだったのです。
⑵引継ぐ人の技術に合う設備
居抜きで医療機関を引継ぐメリットには、診療報酬につながる患者さんのカルテや即戦力で動き、患者さんからの信頼も構築できているスタッフさんがいること、そして何より、高額にかかる医療機器の初期投資が抑えられるということです。
どこかの医療機関に勤務されていた先生が独立をしたり、歯科医師は免許を取得して臨床研修の1年を過ぎ、医師は5年研修を過ぎてすぐ開業したいと考える先生もいます。しかし、研修時代には、その時の新しい設備のある所で学んでいるだろうし、まだ設備を買うほどの収入もないけれど、使いこなせない設備のある所では開業はできないだろうと考えられてしまいます。
⑶医療方針には設備が重要に
医療を引継ぐ事業承継には引継ぐ先生の想いをかなえる診療方針や、それを実現する経営方針があって、どのような診療を展開して、どのような患者を笑顔にしてあげようか…という未来の希望を叶えるためには、やはり技術を最大限に活かせる設備が必要です。
新しい医療機器はあまり中古というものは出てこないし、出たとしてもすぐになくなったり、中古でも高額であったりします。
20年以上も前のレントゲン機器を使いこなせる若い先生もいないため、この居抜きの歯科クリニックを買い受けてくださった先生は、熟練で訪問歯科を専門にこのクリニックを考えていた先生でした。
別のところに本院となる歯科クリニックをお持ちだったのです。
訪問できる患者さんの区域を広げるために在宅医療の少ない地域に分院として買い取ってくださり、レントゲンが必要な患者さんは本院に紹介するという形がとれるようになっていました。(報酬はダブルでいただくことはできませんが…)
医業を承継するということは設備に診療方針が引っ張られてしまうことが大いにあるでしょう。そのため、技術をブラッシュアップするのと同時に、設備もブラッシュアップしていくことがもう少し簡単にできるようになれば、もっと医業承継も進むのではないかと思いました。
それでは、今日はここまで。

