第17話 事業承継で優先されるのはどっち?
事業承継では、今の組織を作り上げてきた社長の考えと未来に引っ張る後継者の考えが違った場合、どちらを優先させるべきか。という問題が起こることがあります。
もちろん、時代に合った方を選べばいいんじゃない?
という考えがしっくりいくのだろうけれど、それは、つまりは、後継者の側が優先されるということでしょうか。
⑴ 何を指標とするのか?
社長の交代が予告・周知されると、社内ではどのような反響があるかを考えなければなりません。
後継者がどのような経歴なのか、人当たりはどうなのか、会社をどのような方向に引っ張っていこうとするのか…
そんなことを従業員や取引先などは知りたいだろうし、知ろうとアンテナを張ってくるでしょう。
では、その従業員はどのような人たちなのか、取引先は社長と個人的にご友人の会社だったりするのだろうか、もしかすると、取引先も事業承継を済ませて、もう若い世代に交代しているところなのかもしれません。
後継者は「自分にどのようなことを望んでいるのか?」もきっと指標の1つに入れたいことでしょう。
それを知るためにも、会社に係る「人」が社長との繋がりがどれくらい濃いのか、今までのやり方が「古いな…」と考えられていたのか、そのようなことも事業承継を進めていく中で調べていかなくてはいけないのです。
⑵ 後継者は3年間「秘密の宝箱」を持て。という考え。
社長への信頼が強く、今までの環境を変えたくないと多くの人が考えているのであれば、後継者は社長としての実績を積むことに専念し、自分のやりたいこと、言いたいことは3年間「秘密の宝箱」にしまっておきなさい。という考えがあります。
社長の築き上げた居心地の良い環境を後継者が変わったタイミングですべて変えてしまうと、従業員たちは後継者に反発心を持つことがあります。
例えば、外部の会社を退職して突然やってきた後継者だったり、従業員ともほとんど接点がなかった部署からやってきて人間関係の構築ができていない場合に「ここのこともよく知らないくせに…」と言われることもあるのです。
これは、派閥(社長派や、他の人を社長にしてほしいと考えていた派など)と考えることもありますが、「後継者の情報がなく、受け入れるために時間がかかる」ということなのかもしれません。
そんなソフト面をうまく乗り越えるためには、後継者は社内の各部署を一通り経験させることが良いとされています。
もちろん、技術的なことを身に着けるというのではなく、業務や従業員を俯瞰して評価できるようになるためにも、一通りの作業やその業務が社内全体にどのような役割をしているのかを知るということが大切ですし、さらに、自分のことをよく知ってもらうことも必要だということです。
⑶ 事業承継が振出しに戻ること
お家騒動で、社長を交代した後に会長となった先代社長が、後継者を追い出して、また返り咲いたというニュースもあったように、事業承継は引継いだ後でも振出しに戻ることもあるのです。
社長にとって会社は自分の人生の多くの時間を費やしてきているので、思い通りにいかないと権限を取り返すこともあるということです。(社内のクーデター騒動なども耳にしますね)
引継ぐときには資金的な面だけではなく、きめ細やかに神経を使いながら後継者も引継ぎ作業に苦労されます。
従業員に「新しいビジョンに向けてスタート!」と言うと反発心が芽生えるのか、社長の思うとおりにしないと振出しに戻されるのか…などを考えて、自分の思い描く羅針盤通りに舵取りができるのかどうか、少しずつ調整しながら自分の歴史を刻んでいくことになるようです。
後継者の考えが「今の時代に合っている方だから…」とドンドン進めていくと、途中で難航したり、ひっくり返ったりすることもあるので、そのために、会社に係っている「人」について情報をできるだけたくさん取ることが事業承継をスムーズに進めていくための要となるのでしょう。
それでは、今日はここまで。