第20話 事業承継の決断に踏み切るとき
事業承継を考えるきっかけの多くは、自分の限界を突き付けられることがあってのことだと思います。
日々進化し続ける医療の業界でも、院長は自身の提供する医療の最先端も知っておかなくては、患者を適切な医療に導くことができません。
⑴ 院長が事業承継に迫られる事態
引退を意識しだした院長が、「後継ぎに医院の将来を任せよう!」と決断したきっかけに、『時代に合った院内設備やオンライン診療などを取り入れなければ患者は他のクリニックに行ってしまうかもしれない…』とか、「新しい検査機器でもっと詳細が分かるようにしなければ、患者を別の病院に紹介するだけで自院では満足してもらえない…」と、考えることもあるでしょう。
また、「行政の誘導するマイナンバーカードでの保険確認や、電子カルテを自院では必要ないと思っていても、医療情報の共有化を進める国の医療政策についていけなくなるのか…』と考えることもあるのではないでしょうか。
そして、よく耳にするのは「夜間に救急で来られる患者の対応や往診の対応に体がついていけなくなってきた」と、自身の体力の限界を感じられている。ということなのです。
⑵ 患者の変化についていけなくなる院長
体力だけでもなく、気力的にもキツくなってきたという院長もおられます。
それは、世の中に情報があふれていることから、インターネット上で患者自身が病気について学んでいて「自分の判断」が前提で、違うことを言おうものなら「この先生は自分のことをわかってくれない」と、処方とはちがう薬を求めてきたり、インターネット上に悪意ある口コミを載せたりすることさえあるといいます。
患者の病気と向き合うのではなく、世間の口コミや、情報に心配になる(踊らされる)患者へ先入観を取り払う説明や治療に向き合う説得に体力・気力が削がれてしまう。ということがあるのだそうです。
医療の提供は契約だから、そのような患者は放っておけばいい。という人もいるが、やはり医院を開業し続けていくためにはそうも言ってられないのです。
医院では院内感染をさせないことや、医療過誤につながるヒヤリハットも起こさないよう情報共有し注意しているのに、患者発信のコメントに風評被害を引き起こされるとなると、時代錯誤というのか、追い付いていけないともいいます。
⑶ バトンタッチする後継者にITリテラシーが必要だということ
昔のように「医者の言うことは絶対!」とならない現代では、医療もサービス業と位置付けられていて、「うちは関係ない…」と言っていると患者に選ばれなくなってしまいます。
中高年世代も当たり前にオンラインで仕事ができるようになってきたし、業務のスリム化でDXに取り組む医療や介護施設も増えてきます。
ITリテラシーがなければ、売上げや経費にも大きくかかわってくることは間違いなさそうです。
IT専門を1人雇い入れればいいのかもしれませんが、トラブルに対応できるように院長も全くお任せ(丸投げ)ではいけないのです。
医療も日々進歩をしていて、検査機器の高度化はもちろん、医薬品もどんどん開発され承認されていきます。
これは今に始まったことではないけれど、さらにスピードアップしていく医療の環境変化に並走できる体力と気力が必要になってくると高齢の院長には患者へのサポートに限界を感じてしまうのかもしれません。
医療については患者だけではなく、患者に係る家族やサポートする施設の人たちの生活にもかかわってくることになります。
時代に合った治療だけではなく、社会にあふれる情報とのかかわり方、そしてITリテラシーを持ったスピード対応ができなければ、院長はバトンタッチを考えた方がよいとされています。
患者に係る多くの人の生活まで巻き込んでしまい、後には医院の評価が下がり将来の経営に影響が出てくる前に…。ということなのでしょう。
それでは、今日はここまで

