第21話 家族目線での事業承継を考えると…
一生懸命事業に打ち込んでこられた経営者が「第二の人生はどうする?」と聞かれても、準備万端な人はそういなと思います。
事業承継をすることに精魂尽きてしまう場合もあって、「後はのんびり…」と考えていても、さて、その居場所は大丈夫でしょうか?
⑴事業承継で用意しなければいけない「自分の居場所」
まず最初に、引退をしようと考えた理由が健康上の問題であれば家族も「仕事はもう無理なんじゃないの?」と心配して、のんびり休める居場所を考えてくれると思いますが、「まだまだ大丈夫!」と元気いっぱいの社長さんは、引退後もきっと好き勝手に家庭内のルーティーンを無視した自分優先の生活をし始めるのではないでしょうか。
事業承継を考えるには、第二の人生をどのように過ごすのか?そのためのお金や居場所をどうするのか?といったことを考えなくてはいけません。
会社は後継者に引継いだとしても、家の中に自分の居心地の良い居場所がなければ外に出てしまうでしょうから、そうなると、会社に来てしまいたくなる人もいます。そうすると、会社でも煙たがられるという事態も起こりえるのです。
今まで、仕事一本で家のことは家族任せで何もしてこなかった人が、急に家の中に居続けると、今までの家のルーティーンが崩れてしまうのです。これは家族にとってはストレスになること間違いないでしょう。
「誰のおかげで飯が食えてると思ってるんだ!」という考えも今では通用しないのです。
仕事に専念できたのは、家のことを任せっきりにできた家族のおかげだという考えが必要で、専業主婦にも労働対価が計算されていることも理解しなければいけません。
⑵ 自分の役割
つまり、家庭での自分の居場所を心地よく過ごすには、殿様で居るのではなく家庭での役割もしていかなくてはいけません。ルーティーンをできるだけ崩さない循環の中に入るのだから、いつも何時ごろから掃除機をかけて、ゴミ出しの準備はいつしているのか、何時までに自分が出すごみをどこに置いておくと困らないのか。家の中にゴミ箱がいくつあるのかも、どこのごみを取り除いているのかも知らない社長さんもいます。
家庭のことを家の人に任せていたのだから仕方がありませんし、家族もわかっていることです。
知らないことは不思議ではないけれど、それを「当然だ!」と言って継続していくことはいけないということなのです。
家のどんなところにガタが来て修理をしなければいけないのか、いつも重たい買い物はどのように買い足していくのか。
そんなことを考えると、新参者でも役割は見えてくるのではないでしょうか。引退をして家庭に入る前に、どんな困ったことがあるのか、自分に何かできそうなことはあるのか…
そんなことを話してみると、家族の人も「引退を心待ち」にしてくれるのではないでしょうか。
家のことは思った以上にたくさん作業があって、手を抜くことはできても終わりのない作業ばかりなので、休むことができません。そのため少しでも役割を持ってもらえると嬉しいものなのです。
⑶ 第二の人生も心地よく
このように、自分の居場所を確保して、さらに、自分の役割を心待ちにしてくれるところに身を置くことが好きな趣味や行ってみたかった旅行などを楽しむ心の余裕もでき、第二の人生を楽しめるものとなるのだと思います。
活動的な社長さんは、家の中は今まで通り任せてしまい、新たにボランティアの会社を立ち上げる人や、地域の活動に参加したり、家庭菜園の畑を借りたりして居場所を作ることもよいかもしれません。
事業承継では、今まで走り続けてきた会社も家庭でもスピードを落とさず、うまく乗り込んでいけるようにしなければいけません。今までのスピードを保ってきた人に敬意を払い、後から参加する人はどのような人であっても初心者として、教わるところから始めるとよいのだと思います。それが、心地よい居場所を作るポイントなのだと私は考えます。
事業承継は家族にとっても生活環境が変わってしまう、一大事のイベントなのです。
引退後の心地の良い環境づくりも事業承継を進める課題の一つとして挙げておきましょう。
それでは、今日はここまで。

