第22話 事業承継に家族信託を考える時
ある大物芸人さんが「面白いことが言えなくなったら引退や」と言っておられた。
きっと、うまく切り返しが出来なくて頭が働かなくなったら…ということだと思います。
会社の社長が株式を過半数持っていて、もしも、「判断能力の低下」となったらどうだろうか。
経営判断の凍結…ということで、総会も開催不能となり経営判断ができないと会社は動かなくなってしまいます。
⑴ 組織を動かすための事前対策を考える
経営権を持っている人の人格や財力などで信用もついてくるのだと思います。
金融機関では年齢で融資を受けられなくなったり、保険も年齢で入れなくなったりするものがありますね。
年齢と知力の衰えはどのような関係になるのか人それぞれだと思いますが、経営判断がうまくできなくなると、財力があっても信用がついてこなくなってしまいます。だから、何歳になったら対策を…とも言えませんが、組織を存続させるために、あらかじめ対策を考えておく必要があるのです。
⑵ 経営権だけを動かすということ
経営判断ができなくなる前に、経営権を動かすということが必要です。
このタイミングが事業承継とされるのですが、後継者に会社を任せるという事業承継の作業は経営権の移動(簡単に言うと株式数などで決定権を持てる力ですね)と財産の移動と人材などの資産(知的資産)の移動が必要です。
このすべてを一度にしてしまうことはありません。特に緊急事態の時には経営権の移動だけでもしてく必要があるということです。
⑶ 相続に繋げる経営権の移動
後継者が社長のお子さんであれば、考えられる経営権の移動と財産の移動のタイミングが相続になることが考えられます。
だからと言って放っておくことなく進めなければ、経営判断の凍結という事態になってしまいます。
しかし、経営権の移動には株式を買い取らなければいけない…という資金面での都合がつかない後継者もいます。その場合、株式の贈与ということも考えられますが、多額の資産になる株式であれば、税金の支払いもの大きくなり、やはり後継者に負担がくることになるのです。
この負担ができないために、経営権の移動が無理だと考えず、家族信託の方法を考えてみるのはどうでしょうか。
株式を信託するとして委託者を社長にし、受託者を後継者、受益者(株式から受け取る受益権)を社長にしておくという方法です。
後に、相続となった場合、そのまま株式が後継者に移動するようにしておくと、受託者が株式の権限を持っていながら、利益は社長に行くので税金はかかりませんし、経営権は後継者が持つことになります。
信託には後に困らないようにすることも考えての契約書の作成が必要です。例えば、後継者が何らかの事故で先に無くなってしまうような事態が起きると、次の第二受託者をやはり第二の後継者となる人に設定しておく必要があるということです。
経営権を守るために、しっかり考えられるときに対策を取っておくことが、現社長の役目となります。
判断能力の低下で誰かに決められてしまうようなことがないように、自分で会社の未来をイメージし、そして安全パイをつかんでおくためにも早めに対策を打っておきましょう。
それでは、今日はここまで。

