第27話 医業承継のタイミングで気を付けるべき信頼関係
かかりつけ医だった先生に長く診てもらっている患者さんは「先生がいなくなると困る…」と、引退を知ったときに不安に思ったり、代わりの先生がいなかったら困るので、別にかかりつけの医療機関を探し始めたりする場合があります。
医療機関では大きな病院の担当医の交代もそうですが、小さなかかりつけ医だった院長先生の引退も患者さんにとっては「おおごと」になるのです。そして「おしらせ」をするタイミングも慎重に気を付けなければいけません。
引退間際に伝えると「こんな大事なことを急に言うなんて、裏切られた気がする…」とまで言われてしまう場合があります。
⑴ 医療提供の中断リスクはこんなところにも…
また、患者さんだけではなく、従業員との関係も同じです。
従業員はもしかすると、今まで「院長先生だから…」とチョットおっちょこちょいなところをフォローしてくれたり、スケジュールを忘れないように、前もって教えてくれたり、サッと動けるように準備をしてくれたりもあるでしょう。もしかすると、薬局の方も「この院長先生ならあるある」の処方箋での間違いに気付いてくれたりするかもしれません。(あってはいけませんけどね…薬の名前は似たものが多くて、ヒヤリハットという場合も考えてですね)
そんなことも、信頼関係があったからこそ上手く続いていた診療所なのに、何の紹介もなく後継者にドンドン引継ぎをしていくようなことはあってはいけません。従業員が気分を悪くして退職してしまった後「代わりの人はすぐに見つかる…」なんて思っていてはいけないのです。今残ってくれている人も「自分たちって、そういうもんなんだ…」と簡単に辞めていく可能性が出てきてしまいます。医療提供が中断してしまう「リスク」となるのです。
⑵ 医業承継の「お知らせ」の順番も大事
医療を絶やさないために一生懸命に繋いでいく作業を進めていることは間違いないのですが、「灯台下暗し…」で、忘れてはいけない段取りがあることを知っていてほしいと思います。
診療が続けられていたのは、さまざまな「信頼関係」があってのことで、従業員との「あうんの呼吸」があったからだと(おそらく分かっておられるでしょうけれど…)考えなくてはいけません。
その関係性をうまく引継ぐことができて、患者さんをはじめ、係る人の心配事や想いなども共有できるように繋いでいかなければいけません。
「後継者を探している。」ということも決定に至るまでは内密にして動かなくてはいけませんし、「後継者を決めた。」ということを公表するにも、後継者側の決断が先ではありますが、外部の人に知られるよりも内部の従業員が先であり、その後に「この医療機関がなくては困る」患者さんや取引先の順で伝えなければなりません。
患者さんの診療報酬を当てにして後継者は資金繰りも考えているはずなので、ガクンと患者さんが減るようなことがあれば、引継ぐことを断念されることもあります。
まずは、「医療はサービス業」だといわれることもありますが、インフラのように「生活上なくてはならない場所」であるので、患者さんや従業員が生活の不安を感じることのないよう、丁寧に継続できる体制を保たなければいけません。
医業承継だけではなく、他の業種でも取引先や顧客、従業員をそっちのけで引継ぎだけを考えていてはいけないのと同じなのですが…
灯台下(もと)暗し…そんなことで今までの積み上げてきた信頼を崩してしまわぬように、注意をしなければいけませんね。
それでは、今日はここまで。

