第28話 事業承継の時にもリスクコミュニケーションは必要
事業承継の時に係らず、事故や災害時の対応(事業継続)を考えてみても、あらゆる組織、グループ内でのコミュニケーションはとても重要なことです。
特に事業承継という経営のトップが替わるタイミングで、いろいろな不満があふれてくることもあり、意見を言わないまま解決しないまま放っておくと、その後、どこかに歪みが生じてドンドン居心地が悪く働きづらい空間になってしまいます。
①リスクコミュニケーションの目的とは?
災害などのリスク対応に限定して考えると、リスクコミュニケーションがうまくいくところは危機対応に強いです。
リスクコミュニケーションの目的は「信頼関係を構築する」ことですが、それがうまく組織の中で回り始めるまでには段階的なステップもあります。
互いに情報を伝え、理解し、「それで行こう!」と行動につなげ、何かあったときの責任は押し付け合わず共有する。このステップがうまく進み、「絆」が強くなれば行動にも力強さが増し、恐怖を吹き飛ばす心の支えになり、対応スピードも上がるのです。
危機対応はチームプレーが必要であり、リスクを乗り越えるには命がけであったり、協力をしなければ時間との勝負に後れを取ってしまい事業がストップしてしまうこともあります。最悪、人が亡くなるような無念な結果につながることまで考えなければなりません。
②リスクをとらえる感覚の違い
しかし、「これはリスクだ」と気付けない人がリーダーであれば、体制がガタガタに崩れてしまいます。
今、何をすべきか、このままだとどんな最悪の結果が待ち構えているのかがイメージできないと、多くの人を危険に巻きこんでしまったり、リスクのレベルに合った行動が決まらなかったりします。
ただ、間違ってはいけないのは、人それぞれの経験でリスクをリスクだと感じない人もいるということです。
リスクに対応できる力も違い、取り掛かる優先順位も違ってくるわけです。そのために、リスクコミュニケーションでの意見は「だれがどうだからダメだ…」というのではなく、どのレベルに合わせることがベストなのかを考え、情報の伝達がうまくできる「社内の風通し」であったり「仕組み」までを考えておく必要があるのです。
組織内ではリスクに対する考え方の「人それぞれの違い」を放っておいてはいけないのです。
③リスクコミュニケーションのコツは?
リスクコミュニケーションでは一方的に話ができる人(声が大きな人)が優位であってはいけません。
なかなか自分の意見が言えない人も考えをメモにしてでも出してもらう必要があります。意見は言うけれど、なかなか自分から行動にうつせない人もいます。そのような人も役割を持たせることで機敏に動けたりするので、コミュニケーションの結果を具体的な行動につなげていくことも必要なのです。
組織やグループの中で一度、災害や感染症リスクを題材に(命の危険まで感じられるような事案で)課題を見つけて解決の意見を出し合う机上訓練というものをしてみてはどうかと思います。
災害はイメージしやすく、まずは意見を出しやすくすることを目的にし、情報を伝えるステップを皆ができるようになり、責任の分担もできて、信頼関係を強くしていくことができると、災害だけではなく事業承継のような組織が大きく変わる瞬間でのリスクコミュニケーションもうまくいくのではないでしょうか。
自分の生活や命、家族の安全に気遣いができる、そんな職場で仕事をしたいと思うのは当然で、リスクコミュニケーションをうまく活かせるようにするための機会を用意してチャレンジしていくとよいと思います。
それでは、今日はここまで。

